更年期を楽にする漢方。辛い症状を和らげてくれる漢方とは?
閉経前後に様々な不調が現れる更年期障害。病気ではないけれど色々な症状に悩まされます。身体だけではなくメンタル面でも憂鬱な気分が続いたり、眠れなかったり…程度は個人差がありますが、酷い場合は日常生活に支障をきたすことも。
東洋医学に基づいた漢方は更年期治療に効果があると言われています。ホルモンバランスの乱れにより、どこも悪くない(病気ではない)のに現れる様々な不調(不定愁訴)の改善にとても適しているのです。
ホルモン補充療法(HRT)や抗うつ薬、睡眠薬などの治療は抵抗があるので出来れば避けたい…という方にもおすすめです。漢方で更年期の辛い症状を和らげたいとお考えの方に、更年期障害に効くおすすめの漢方をご紹介いたします。
漢方(東洋医学)における更年期治療
漢方は、本来体が持っている働きを高め、体自身の力で健康を目指すという東洋医学の考えに基づいたものです。
- 気(エネルギー)
- 体を動かす源となるもの。目には見えないもので、いわゆる「元気」「気力」などと言われるものです。
体の各機能を動かす言動力となり、血や水の流れを司り代謝を促します。
- 血(けつ/血液)
- 血液は全身に栄養を運び、老廃物を回収する役目を持っています。
ここに問題があると冷え性や肩こりになったり、動悸や不整脈、循環器の疾患などの原因となります。
- 水(すい/体液)
- 体内の水分。体全体を潤します。体温調節や関節の動きを滑らかにする働きもあります。
ここに問題があるとむくみや乾き(ドライアイ、口が渇くなど)が起こり、また脂肪が溜まりやすくなるとも言われています。
この3つがバランスよく体を巡っている状態が「健康」とされています。もし体に不調がある場合は、このバランスが崩れているということ。
体全体の状態を総合的に診て、崩れたバランスを整えていく。これが東洋医学の考え方です。
さて、漢方においてどの薬を使用するかを決める手がかりが2つあります。1つは先に述べた気・血・水のどこに問題があるのか(症状)、そしてもう1つは「証」と呼ばれる人によって異なるタイプ(体質)です。証は体力や体型などの特徴を基に分類されます。
症状と体質の組み合わせによって薬を処方するのですが、もしこの見極めを誤ると体に合わない薬でお腹を壊してしまったりする事もあるので処方には専門的な知識が求められます。
ですが漢方には、更年期の症状に効果的な婦人科三大処方(三大婦人薬)というものがあります。
この3つの薬で更年期症状の殆どをカバー出来ると言われている優れものです。それぞれどのような特徴があるのかご紹介していきます。
更年期治療の強い味方・三大婦人薬とは
三大婦人薬とはどのような薬なのでしょうか。漢方薬は草木などの植物や鉱物など、自然の成分である「生薬」を組み合わせて作られます。
それぞれの薬に配合されている生薬、適している体のタイプ(証)、どういった症状に効果があるかをご説明します。
三大婦人薬(1)当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
配合されている生薬:
- 当帰(トウキ)…セリ科トウキ属の植物の根。血の循環を活性化します。
- 川芎(センキュウ)…セリ科センキュウの根茎。血の流れを改善します。
- 芍薬(シャクヤク)…ボタン科シャクヤクの根。血管の働きを良くします。
- 茯苓(ブクリョウ)…サルノコシカケ科マツホドの菌核。体力増強作用があります。
- 蒼朮(ソウジュツ)…キク科ホソバオケラの根茎。水分の代謝を促します。
- 沢瀉(タクシャ)…オモダカ科サジオモダカの根茎。不要な水分を排出する作用があります。
痩せ形・体力の無い人向き。気・血・水全ての異常に対応する薬です。血の巡りを良くし、体を温めます。血行が良くなると全身に栄養が行き渡るようになります。また、水分代謝を整える効果も。
- 手足・腰の冷え
- むくみ
- めまい
- 頭重
- 肩こり
- 腰痛
- 耳鳴り
などを改善する効果があります。
三大婦人薬(2)桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
配合されている生薬:
- 桂皮(ケイヒ)…クスノキ科トンキンニッケイ等の樹皮。体を温め代謝を促します。
- 芍薬(シャクヤク)
- 桃仁(トウニン)…バラ科モモまたはノモモの種子。血液の停滞を解消します。
- 茯苓(ブクリョウ)
- 牡丹皮(ボタンピ)…ボタン科ボタンの根の皮。熱を冷ます効果があります。
体力がある人向き。血の巡りを良くし血行循環不良を改善するため冷え性に効果があります。また熱を鎮める成分も含まれていますので、ホットフラッシュ(のぼせ・ほてり)にも効くと言われています。
血行不良からくる頭痛・めまいや肩こり、またこれらの体の不良からくるイライラなどにも効き目を発揮します。
三大婦人薬(3)加味逍遙散(かみしょうようさん)
配合されている生薬:
- 柴胡(サイコ)…セリ科ミシマサイコなどの根。熱を下げたり、痛みを抑える働きがあります。
- 芍薬(シャクヤク)
- 当帰(トウキ)
- 茯苓(ブクリョウ)
- 蒼朮(ソウジュツ)…キク科ホソバオケラの根茎。水分の代謝を促します。
- 山梔子(サンシシ)…アカネ科クチナシの果実。鎮静、消炎などの効果があります。
- 牡丹皮(ボタンピ)
- 甘草(カンゾウ)…マメ科カンゾウ植物の根や根茎。鎮痛効果があります。
- 生姜(ショウキョウ)…ショウガ科ショウガの根茎。体を温め、代謝機能を高めます。
- 薄荷(ハッカ)…シソ科ハッカの地上部。鎮痛、鎮静、消炎などの作用があります。
三大婦人薬の中で最も処方されているのがこの加味逍遙散。体力があまりない〜中程度の人向き。熱を取り除く効果がありますので、のぼせ感や異常な発汗を抑えてくれます。また、不安や不眠、抑うつ状態など精神の不調にも強い薬です。
- 肩こり
- 頭痛
- めまい
なども改善します。
ドラッグストアなどで買える、漢方由来の市販薬
三大婦人薬は病院でも処方してくれます。健康保険が適用されますので薬代を抑えることが出来ますが、医師によってはホルモン補充療法を薦められる場合もあります。
「忙しくて病院に行く暇が無い」という方には少し割高にはなりますが、薬局で市販されている漢方由来の薬もあります。
ドラッグストアに行ってみたら種類が沢山あってどれがいいのか分からない…そんな時の為に更年期治療の市販薬の中でおすすめのものを2つご紹介します。
日本生まれの処方を採用。タケダの「ルビーナ」
ルビーナは江戸時代に日本で考案された連珠飲(れんじゅいん)という漢方処方の薬です。四物湯(しもつとう)と苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)という2つの処方を組み合わせたものです。
配合されている生薬:
- 芍薬(シャクヤク)
- 当帰(トウキ)
- 川芎(センキュウ)
- 地黄(ジオウ)…ゴマノハグサ科ジオウ属植物の根茎。血の巡りを良くしますが、熱を抑える効果もあります。
- 茯苓(ブクリョウ)
- 桂皮(ケイヒ)
- 蒼朮(ソウジュツ)
- 甘草(カンゾウ)
四物湯は血液の循環を促し、体を温める働きが、苓桂朮甘湯は水分代謝を良くする効果と自律神経の働きを整える効果を持っています。
- ホットフラッシュ
- 手足や腰の冷え
- 倦怠感
- めまい
- 頭痛
- 不眠
などの症状に効くお薬です。ルビーナはパッケージが2種類あり、赤いものとピンクのものがありますが、赤いパッケージが更年期用になります。食後に3錠、1日3回服用します。
全ての「証」に対応!小林製薬「命の母A」
配合されている生薬:
- 大黄(ダイオウ)…タデ科ダイオウ属植物の根。血行障害を改善します。
- 川芎(センキュウ)
- 紅花(コウカ)…キク科ベニバナの花。婦人病特有の血行障害に効果があります。
- 芍薬(シャクヤク)
- 当帰(トウキ)
- 桂皮(ケイヒ)
- 香附子(コウブシ)…カヤツリグサ科ハマスゲの根茎。痛みや抑うつ、イライラなどを解消します。
- 吉根草(カノコソウ)…オミナエシ科カノコソウの根及び根茎。鎮静効果があります。
- 人参(ニンジン)…ウコギ科チョウセンニンジンの根。体を温め、新陳代謝を促します。
- 蒼朮(ソウジュツ)
- 茯苓(ブクリョウ)
- 呉茱萸(ゴシュユ)…ミカン科ゴシュユ、ホンゴシュユなどの果実。痛みを抑える効果があります。
- 半夏(ハンゲ)…サトイモ科カラスビシャクの球茎の外皮。体を温め、新陳代謝を促します。
実に13種類もの生薬が配合されています。三大婦人薬に使われている生薬をバランスよく配合しており、どんな体質の人でも使えるように作られています。
- 倦怠感
- 冷え
- イライラ
- ホットフラッシュ
- 頭重
- めまい
- 動悸
- 不安
- 抑うつ
などに効果があります。食後4錠を1日3回服用します。
漢方の力で更年期を楽に乗り切りましょう
更年期治療におすすめの漢方をご紹介してきました。西洋医学で処方される薬は体の正常な働きを補うもので、薬が切れると元の不調な状態に戻ってしまいます。
これに対し始めに述べた通り漢方薬は、体が本来持つ機能を高めるものです。ですので「安易に薬に頼るのは抵抗がある、でも辛い症状を何とかしたい」という方にも適していると思います。
漢方の力を上手に利用して症状を改善し、更年期を健やかに過ごしていきましょう。
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